「このクライアントとは、もう終わりにしよう」——そう決めるまでに、私は3か月かかった。しかも、辞めるべきサインは契約2か月目にはもう出そろっていた。それでも私は、動かなかった。
相手はクラウドワークスで直接契約に切り替えた、ライティング案件のクライアントだった。最初の単価は1文字3円、月の依頼本数は10本前後で、収入にすると月3万円ほど。副業全体の3割を占める、決して小さくない相手だった。ところが2か月目あたりから修正依頼の回数が増えていく。1本あたり平均2回だった修正が、5回、6回と膨らんでいった。しかも「ここ、もう少し面白くしてください」という抽象的な指示ばかりで、何をどう直せば通るのか、最後まで分からないまま作業を重ねていた。
見て見ぬふりをしていた3つのサイン
今振り返ると、サインは最初から出ていた。以前副業の悪い案件はこう見抜くという記事で自分なりの基準を書いたのに、実はほとんど当てはまっていたことに、渦中にいる間はまったく気づけなかった。具体的には、支払いが契約書の記載より10日以上遅れたこと、修正の指示が毎回変わって前回の指示と矛盾していたこと、そして何より、通知が来るたびに胃が重くなっていたこと。この3つだ。
体の反応が一番正直な指標だったと、今なら思う。単価自体はそこまで悪くなかった。それでも通知が来るたびに身構えるようになっていたなら、それはもう「割に合わない仕事」のサインだったのだろう。月3万円を失うのが怖くて、私はその感覚に3か月もふたをしていた。

手を引くと決めた、具体的な瞬間
決定打になったのは、日曜の夜9時に届いた「明日の朝までに全面的に書き直してください」というメッセージだった。契約書には修正は2回までと明記していたのに、その日はすでに4回目だった。以前、報酬が未払いになったときの記録を書いた経験があったから、契約書に書いてあることが必ず守られるわけではないと身にしみて分かっていたはずなのに、それでも最初は「今回だけ」と引き受けそうになった。
結局、その晩のうちに事情を説明する断りのメッセージを送った。契約満了をもって更新しない、という趣旨だ。返信は素っ気なかったが、翌週には別のクライアントから直接契約の打診が2件、続けて届いた。案件を断ったことがむしろ良い依頼につながった経験は、これで二度目になる。
切った後、数字で変わったこと
手を引いてからの1か月、対応時間は週あたりおよそ4時間減った。単価だけを比較すればそのクライアントの案件のほうが高い月もあったが、修正対応にかかっていた時間まで含めて時給換算すると、実質的にはむしろ下がっていた計算になる。空いた時間で新規クライアントの提案文を書いたところ、2件のうち1件が通り、結果として翌月の収入は当初の心配とは逆に、切る前とほぼ変わらなかった。この感覚は人によって違うはずで、あくまで私の場合はそうだった、という話にすぎない。

| 項目 | 切る前 | 切った後 |
|---|---|---|
| 週の対応時間の目安 | 約10時間 | 約6時間 |
| 修正の平均回数 | 5〜6回 | 2回前後 |
| 通知が来た時の気持ち | 身構える | 特に何も感じない |
よくある疑問
収入が下がるのが怖くて動けない場合はどうすればいいか。私は空いた時間を新規提案に充てることで補えたが、これは案件量に余裕がある人向けの話だ。まず1件だけ提案を出してみてから決めても遅くはないと思う。
揉めずに切るコツはあるか。契約書の条項を根拠に、感情的な言葉を使わず、期限とともに淡々と伝えることだと感じている。
はっきり言えるのは、辞めどきのサインは大抵、契約を切る何か月も前から出ているということだ。単価や条件だけを見ていると、この手のサインは驚くほど見えなくなる。次に同じような重さを感じたら、今度はもう少し早く動こうと思っている。
