副業を三年やってきて、いちばん効いたのは新しい案件を探す力ではなく、一度取った案件を切らさない力だったと思う。単発ばかり追いかけていた一年目は、月末が来るたびに「来月ゼロかもしれない」という不安があって、その不安に押されて安い仕事まで受けてしまっていた。いまは受注の七割くらいが同じ相手からの継続で、収入の額そのものより気持ちのほうがずいぶん楽になった。

単発ばかりだと、営業に時間を食われ続ける
当たり前の話なのだけれど、提案文を書いてポートフォリオを整えて条件をすり合わせる、あの一連の作業には案件本体と同じくらいの時間がかかる。私の場合、クラウドワークスで一件受注するまでに提案を八件から十件くらい出していたので、ざっくり二〜三時間。実作業の報酬と合わせて時給換算すると、あまり考えたくない数字になる。継続案件だとこの部分がまるごと消えて、「今月も同じ形でお願いします」から始まるので手を動かすだけでいい。もっとも、提案文の型そのものは初案件のときに書き直した経験で固まったので、あの時間は無駄ではなかったとも思う。
納品のとき、次につながる一行だけ足すようにした
やっていることは特別ではない。納品メッセージの最後に、具体的な提案を一文だけ入れる。「今回の記事、導入をもう少し体験寄りにする案もありました。もしシリーズ化されるなら次回はそちらで書けます」みたいな書き方。ポイントは「またよろしくお願いします」で終わらせないこと。前者はクライアントに判断材料を渡していて、後者は判断をぜんぶ相手に投げている。この差は思っていたより大きかった。実際、これを始めてから三件くらいは向こうから追加の相談が来た。ただ全部がそうなるわけではないので、期待しすぎないほうが精神衛生上いい。

相手の手間が減ると、自然に次が来る
継続してもらえた相手を振り返ると、共通していたのは「私に頼むと発注側の作業が減る」状態を作れていたことだった。納品物をGoogleドキュメントで渡すときに想定タイトル案を三つ添える。修正指示がしやすいようにコメント権限を最初から開けておく。Chatworkの返信は遅くても半日以内。地味だけれど、発注する側からすると「細かく説明しなくても伝わる人」は替えがきかない。逆に、単価だけ安い人はいくらでもいる。だからこそ単価の交渉も、継続の実績が積まれてからのほうが通りやすいのだと思う。
単発中心だった頃と、いま何がどう違うのか
| 単発中心だった一年目 | 継続が増えた三年目 | |
|---|---|---|
| 営業にかける時間 | 週に三〜四時間 | 週に三十分程度 |
| 翌月の収入の見通し | ほぼ読めない | 七割くらいは読める |
| 単価の交渉 | 言い出しにくい | 実績を根拠にできる |
| 月末の気分 | とにかく重い | だいぶ軽い |
数字はあくまで私の感覚値で、職種や案件の性質によってまったく変わると思う。ただ「読める収入がある」ことの効き方は、金額そのもの以上だった。ちなみに継続で収入が安定してくると住民税や確定申告の話が必ずついてくるので、そこは早めに確認しておいたほうがいい。制度の細かい部分は年度で変わることもあるから、国税庁のサイトか住んでいる自治体、あるいは税理士に確認するのが確実だと思う。
続かない案件は、続かないままでいい
全部を継続にしようとして疲れた時期もあった。予算が単発前提で組まれているところ、担当者が毎回入れ替わるところ、そもそも一回で完結する企画。こういうものはどう工夫しても継続にならない。見極めがつくようになってからは、きれいに納品して気持ちよく終わらせて次に行くようにしている。継続を狙うのは、話が通じて支払いがきれいで、また関わりたいと思える相手だけ。結果的に、そのほうが継続率も上がった気がする。
