日曜の夜11時42分。Toggl Trackの月間レポートに表示された「38時間51分」という数字を、私はしばらく電卓アプリと見比べていた。その月の副業報酬は52,000円。割り算すると、時給は1,338円。頭の中ではずっと「3,000円くらいは出ているはず」と思っていたので、実際は想定の4割ほどしかなかったことになる。
きっかけは、継続案件のクライアントから「次の企画、1本あたり何時間くらいかかりますか?」と聞かれたことだった。すぐに答えられなかった。3年近く副業でライティングを続けてきたのに、自分の作業時間をまともに測ったことが一度もなかったのだ。

記録のルールは「5分でもタイマーを押す」だけ
使ったのは無料プランのToggl Track。スマホとパソコンの両方にアプリを入れて、作業を始めるときに必ずタイマーを押す。決めたルールはそれだけだった。タグは「執筆」「リサーチ・構成」「修正対応」「メール・チャット」「提案文」の5つ。細かく分けすぎると続かないと思い、このくらいで止めておいた。
最初の1週間は押し忘れが多かった。特にチャットの返信は、通勤電車で2分、昼休みに3分という具合に細切れなので、つい記録の外に落ちる。途中から「スマホでクライアントのチャットを開く前にタイマーを押す」と決めてからは、漏れがだいぶ減った。
1ヶ月記録してわかった、38時間の内訳
その月の仕事は、1本1万円の継続コラムが4本と、1万2千円の単発案件が1本。1本あたり3時間で書けているつもりだったので、見込みでは15時間ちょっと。実際の内訳はこうなった。
| 作業の種類 | 記録時間 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 執筆 | 17時間20分 | 約45% |
| リサーチ・構成 | 8時間05分 | 約21% |
| 修正対応 | 5時間40分 | 約15% |
| メール・チャット | 4時間16分 | 約11% |
| 提案文の作成 | 3時間30分 | 約9% |
| 合計 | 38時間51分 | — |
執筆そのものは17時間20分。1本あたりに直すと3時間半弱で、実は見込みとそれほどズレていない。問題は残りの半分以上だった。
時給を削っていたのは「書いていない時間」だった
一番驚いたのは修正対応の5時間40分だ。記録を見返すと、そのうち約3時間がたった1本の記事に集中していた。構成の段階で方向性をすり合わせずに書き始めてしまい、3回書き直しになった案件である。当時は「まあ、よくあること」くらいに流していたが、数字で見るとさすがに笑えない。
メール・チャットの4時間16分も地味に効いていた。1回あたりは数分でも、通知が来るたびに返していると、1ヶ月で映画2本分になる。しかも返信のたびに執筆の集中が切れるので、実際の損失はこの数字以上だったと思う。
リサーチも想定より長かった。同じ業界のコラムを毎月書いているのに、毎回ゼロから資料を探し直していたのが原因だった。
翌月に変えた3つのこと、変わらなかったこと
まず、新規の契約時に「修正は2回まで、構成案の段階で1回確認をお願いします」と最初のメッセージに書くようにした。拍子抜けするほど、嫌がるクライアントはいなかった。むしろ「助かります」と返してくれた人もいる。
次に、チャットの返信は昼12時15分と夜21時の1日2回にまとめた。急ぎの連絡が来ないか最初は不安だったが、副業の案件で数時間以内の返信を求められることはほとんどなかった。
3つ目は、リサーチで見つけた統計や資料のリンクをNotionの1ページに溜めていくこと。翌月以降の構成づくりが目に見えて速くなった。
翌月の記録は31時間12分、報酬は5万円ちょうどで、時給はおよそ1,600円。劇的とまでは言えないけれど、同じ仕事量で7時間ほど浮いた計算になる。一方で、執筆そのものの時間はほとんど縮まらなかった。ここは単純に、書く力を伸ばすか文字単価そのものを交渉するしかないのだと思う。浮いた時間の使い方については、平日の副業時間を47分増やした話でも少し書いている。
作業時間の記録を始めたい人へ(よくある質問)
無料のツールで十分ですか?
私の場合は、Toggl Trackの無料プランで困ったことはなかった。タグ別の集計と月間レポートが見られれば十分だと思う。
記録が面倒で続きません
最初から完璧を目指さないほうがいい。私も1週目は3割くらい押し忘れた。「作業を始める前に押す」という一点だけを守り、忘れた分は思い出せる範囲で後から足す。それで1ヶ月分の傾向は十分つかめた。
実質時給が低いとわかったら、案件を減らすべき?
すぐに切る必要はないと思う。まずは時間を食っている原因が、案件そのものなのか、自分の進め方なのかを分けて考えたい。進め方の問題なら改善の余地がある。何度改善しても修正や連絡に時間を取られ続けるなら、クライアントとの付き合い方を見直すサインかもしれない。
もちろん、時給だけが副業の価値ではない。新しい分野の勉強になる案件なら、多少時給が低くても続ける理由はある。それでも、自分の1時間がいくらになっているのかを知らないまま続けるのは、地図を見ずに歩いているようなものだった。1ヶ月だけでいいので、一度測ってみてほしい。数字を見た夜は、たぶん少し落ち込む。でもその次の月は、確実に何かを変えられる。
