火曜の23時40分、スマホが震えた。「すみません、もう一度だけ修正をお願いできますか」。この「もう一度だけ」を見るのは、その案件で6回目だった。
私は画面を見たまま、返信の文面を打っては消していた。断る言葉が見つからない。というより、断っていいのかどうかさえ分からなかった。副業を始めて1年ほど経っていたのに、修正の回数について一度も条件を確認したことがなかったのだ。

「もう一度だけ」が6回続いたときの中身
案件は、企業サイトに載せる商品紹介記事(約3,000字、報酬は8,000円)。初稿は2日で出した。ところが、修正依頼の中身を後から並べてみると、半分近くが「最初の指示書に書いてあったこと」ではなく、途中で担当者の頭に浮かんだ新しい希望だった。見出しの順番を変えてほしい、やっぱり事例を足したい、トーンをもう少し柔らかく。どれも一つひとつは小さい。小さいから断りにくい。
結局、納品から完了までに11日かかった。作業時間をメモしていたので計算してみると、実質の時給は600円前後。前に作業時間を1ヶ月記録して実質時給を出したときも思ったけれど、時間単価を壊すのは、案件そのものより「終わらない修正」であることが多い。
悪いのは相手ではなく、決めていなかった私
ここは正直に書いておきたい。担当者の方は終始丁寧で、悪意があったとは思っていない。ただ、発注する側は「納得するまで直してもらえる」と考えるのが自然で、受ける側が線を引かなければ、その線は存在しないまま進んでしまう。これは悪いサインを3ヶ月無視したときと、構造がよく似ていた。違うのは、今回は「サイン」ですらなく、ただの確認不足だったこと。
次の案件から、応募文の最後に一文だけ足すようにした。「修正は納品後2回まで対応します。3回目以降は内容に応じて追加のご相談をさせてください」。強い言い方にならないよう、「ご相談」という言葉を残している。
取り決めの有無で、同じ種類の案件がどう変わったか
数字にすると差ははっきりしていた。下の表は、同じ商品紹介系の案件を、私の記録の中から二つ並べたものだ。サンプルが少ないので一例として見てほしい。
| 項目 | 取り決めなしで受けた時 | 最初に決めておいた時 |
|---|---|---|
| 修正の回数 | 6回(実質は8回) | 2回まで、3回目からは追加料金 |
| 完成までの日数 | 11日 | 5日前後 |
| 実質時給の体感 | 600円前後 | 2,000円前後 |
意外だったのは、断られるどころか、「修正の範囲が最初から分かって助かります」と言われたこと。クラウドワークスの契約前のメッセージ欄に書いておけば、後から揉めたときにも履歴が残る。ココナラのようにサービスの説明欄で修正回数を明記している出品者が多いのも、同じ理由だろう。

それでも「もう一度だけ」が来たときの返し方
回数を決めても、3回目の依頼は来る。そういうときは、断るのではなく選択肢で返すようにしている。「今回の変更は新しい構成の追加にあたるので、追加料金で対応するか、今回は現状のまま納品とするか、どちらがよろしいでしょうか」。文面は事務的でいい。感情を入れると長くなるし、自分も疲れる。
もちろん、全部を金額に換算するのが正解とは限らない。長く付き合いたい相手なら、あえて1回サービスする判断もある。私は値上げを断られた経験もあるので、関係を守りたい気持ちは分かる。大事なのは、「サービスした」と自分で認識して選ぶこと。何となく受け続けるのとは、まったく別物だ。
よくある疑問(Q&A)
Q.初めての案件で修正回数を書いたら、嫌がられませんか? A.私の場合は、書いて断られた記憶がまだありません。ただ、案件や相手によって違うので、不安なら「基本は2回まで」のように幅を持たせるのも一つの手です。
Q.すでに受けてしまった案件はどうすれば? A.途中からでも、「ここまでを1回目の修正とカウントさせてください」と伝えて、以降の線引きを共有する方法があります。契約や報酬に関わる判断は、プラットフォームの規約も確認してください。
今日からできるのは、次に出す応募文の最後に、修正の回数を一文だけ足すこと。それだけで、深夜23時40分の通知の重さが、少し変わる気がしている。
